内向きと客向き

 洗濯機脇の排水口の流れが悪くなったので、「暮らし安心クラシアン」というテレビCMでおなじみの専門業者に電話を掛けたんです。コールセンターにつながって女性のオペレータが出た。こちらからカクカクシカジカと状況を説明したところまでは良かったんだが、ここでオペレーター、いきなり、

「それではお客様の会員登録をしますので、お電話番号から頂戴いたします」

と言う。

「いやあのね、別に会員登録をしたいんじゃないんです。修理に来てもらいたいんだけど」

「いえ、会員登録しないとできない決まりになっていまして」

「だから、別にあなたの会社の会員になりたいわけじゃないんですって」

と、やりたくもない押し問答をやる羽目になってしまったんですが、要するにデータベースに入力しないと仕事が回らないという社内の仕組みを前提とした内向きのスクリプトで応対してるんですね(コールセンターは「トークスクリプト」というマニュアルに則って対応します)。

 でも本来なら、このスクリプトは客側を向くように設計すべきで、

「排水は溢れたりしていませんか? 階下に被害は及んでいませんか?」
「上水道の元栓の場所は分かりますか? ご自分で閉めることはできますか?」
「緊急を要しますか? 本日伺うとしたら何時までなら大丈夫ですか?」

といったようなことをまず訊いて客を安心させる。個人情報を聞き出すのはそのあと。コールセンターは受付だけが仕事で、実際の修理作業は近隣の契約業者が行いますから、この段階で詳しいことを訊いても意味がないと考えてスクリプトを設計したのでしょうけどね。

 お蔭で「お客の立場で物事を考える」ことの難しさが良く分かりました。

 あ、別に押し問答の末に相手に対してキレたわけじゃありませんよ。穏やかに話しました(穏やかな押し問答って…?)。

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