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丸山変電所と横川発電所

  • 2009.01.11 Sunday
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廃虚をテーマにした写真を巡り、写真家の丸田祥三さんが、写真家の小林伸一郎さんを相手取り、「撮影場所や構図をまねされ、著作権を侵害された」などとして、損害賠償や写真集の販売差し止めなどを求める訴訟を9日、東京地裁に起こした。

丸田さんは各地の「廃虚写真」を撮り続け、1990年代前半から発表。一方、小林さんも1998年以降、廃虚をテーマとする写真を次々と発表している。問題となったのは、小林さんの写真集に掲載された変電所跡や鉱山の跡地、廃屋などの写真5点。(読売)


 両氏の写真の比較はこちら

 論評は控えますが、廃墟って写せる立ち位置が決まってしまう場合もあるし、資料がなければ過去の本を参考にするのは当たり前なので、誤りまで一緒なのだから盗作だ、と結論付けるのは少し短絡すぎるような気もします。ただ、過去にソフトレビューの原稿を真似された経験を持っているので、訴える側の気持ち(というか、怒り)も分からないでもありませんが。

 ま、それは置いといて、丸山変電所で思い出し、昔仕事で扱った古写真をHDDの隅から引っ張り出してきました。

 これが丸山変電所。明治45年建造なのでそれ以降と思いますが、正確な撮影年は不明(ちなみに、7月29日までが明治45年で、7月30日からが大正元年だそうです)。現在は国の重文として修復・保存されています。遊歩道が整備されているほか、碓井峠鉄道文化むらからトロッコ電車が出ています。
丸山変電所

 こちらは同じく信越本線沿いにあった横川発電所。東北の旧家の蔵から出てきた原版を個人的に持っています。おそらく冬の間出稼ぎとして建設作業にあたり、故郷に戻るときに記念として渡されたのでしょう。明治44年2月5日の撮影(完成一年前)。建物は現存しません。
横川発電所

 土木学会のニュースレターによると、横川発電所で6,600Vの交流を起こして、丸山変電所で直流650Vに変圧していたようです。

 ところで、国がアプト式を導入してまでも信越本線の敷設や整備を急いだのは、有事の際に兵士や物資を日本海側に運搬する手段が不可欠との判断があったからだ、という話を聞いたことがありますが、本当のところはどうなんでしょう。

Comments:9

みさ 2009/01/11 02:29 AM
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
そのニュース私も見ましたー。

変電所、発電所・・・なんだか素敵ですね~。
2009/01/11 12:01 PM
ふむむ、比べるとけっこう似てる気がします。
写真集を参考に現地に行ったのは間違いないような?
ほかのアングルで撮りようもあるかと思います。

でも、私だったらテーマ自体、すでに他の人が形にしたものを
なぞるのは面白くないですが・・・。
gramercy 2009/01/11 12:02 PM
でした。↑
ユキヒロ 2009/01/11 01:23 PM
みささま、
 はい、あけおめことよろ、お互い元気で頑張りましょう。

 まだ電化が当たり前ではない時代ですから、
 先人はさぞや苦労したのではないでしょうか。
 これらに使われたかどうかは調べていませんが、
 当時の建物に使った大量のレンガを焼くために
 有名な渋沢栄一氏が深谷にレンガ工場を作ったりもしています。
 いろいろ芋づる式に出てくるのが近代史の面白いところです。
ユキヒロ 2009/01/11 01:31 PM
gramercyさま、
 そうなんです、人のテーマの二番煎じってのは、
 著作権どうのこうのの問題じゃなくて
 写真家として生存にかかわる根本問題のような気もします。
 それと、出版社の意向やチェックがどう働いていたかですね。
 まぁ大人の世界の事情はよく分かりませんが
せき 2009/01/11 07:34 PM
2人の作品をちゃんと刊行された物で比べると個性が全く違う。天が下、本当に新しいテーマなんてありえないし。ヨーロッパの宗教画を見たら皆パクリか。個性が出ているから同じような聖母子でもそれぞれに感動するのだろう。日本の和歌も古今集以降は盗作ばかりになってします。前人の作品に敬意を払いつつ(まあ払っているかは分からぬけれど)どんどん同じテーマを撮る事で進化するはずだ。

例えば持ち込んだ小道具のアイディアが似ているのなら著作権侵害だろうが、写真というのは同じ立場所でも個性が出て差が出るもの。丸山さん自身自分の写真に個性が無いと認めているみたいで笑止だ。

自分で発見したと思い込んでいる廃墟を他の男に犯されたと思っているみたいだ。手をつけた女は自分のと思っているDV体質の変質者的発言に似ているね。
プチぞう 2009/01/11 09:03 PM
あまり関係ないかもしれないけど、
絵も巨匠の作品の構図をパクると
とても描きやすいです。
別物になるので、問題ないですけど。
ユキヒロ 2009/01/12 01:38 AM
せきさま、
 先生かな、それとも同姓さん
 示唆に富むコメントありがとうございます。

 これはエンジニアの世界でも昔からあって、他社製品をどこまで参考にして設計するのか、ということはもう何十年も前から課題なっていまして、ひとつの方法が、他人(他社製品)の設計はまったく見ずに設計する。もうひとつは他人の設計は見るんだけれども、あえて意図的に違う実装をする。で、それぞれの場合とも、きちんと設計過程をドキュメントで残すようなことをするわけです(このドキュメントは参照したが、これは見ていない、とか)。まぁ見ていないことを証明するのは難しいのですが。

 同じテーマで写真を撮る、あるいは文章を書くときに、やはり先人の作業を参考にすることは当然あるわけでして、その場合は意図的に変えておいたほうが「安全」ではあるわけです。そこらへん、小林氏が丸田氏の作品を見たことがあるのかどうか知りませんが、見たとすると脇が甘かったような気もしますけどね。

 ただご指摘のように一冊の本・写真集としてみていかないと断片を取り出しても判断できませんし、お二人がこれまでどういう活動をしてきたのかも詳しく存じ上げないので、これ以上はなんとも。
ユキヒロ 2009/01/12 01:43 AM
プチぞうさま、
 音楽の世界でも一緒で、ジャズを志している人は、まずはコピーから始めて、ある程度技術が付いてきたあとで、自分なりの吹き方に替えていくじゃないですか。自分は仕事以外で撮る写真で誰かを真似しようとかはあまり思わないけど、いろんな写真を見たイメージは頭の隅のどこかに残っているわけで、結局誰の影響も受けない作品というのはできないんですよね。あとはそれを真似・模倣と判断するかどうかだと思う。
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