Home > 私がサラリーマンを辞めて独立を決意したわけ(2)

-2003年4月1日からフリーランスになるわけですが、実際になってみてどうでしたか?

ユキヒロ:なんて言うかな、明るい未来があるっていう感じ?(笑)。保険とか年金とかいろんな手続きもしなくちゃいけないし、仕事も獲得しなくちゃいけないし、自宅兼のオフィスも少し整えなくちゃいけないし、独立した当初はやらなきゃならないことが沢山あるんですよ。そういう意味で結構ワクワク感があったよね。

-先ほど、独立した直後から仕事を始められるように営業した結果、仕事ゼロの期間を生じさせずに済んだとのことでしたが、フリーになった多くの人が仕事の獲得に苦労しているわけで、これって結構奇跡的なことですよね。

ユキヒロ:その点では多くの人に応援してもらった気がする。たとえば、それまで取引先だった某外資系企業の部長さんが、独立した当初は大変だろうからと、1年間にわたって技術コンサル契約をくれたんだよね。しかもそれなりの額を毎月定収入としてくれたんで、これは本当にありがたかった。このオファーがなかったら金銭的には相当苦しくなってたんじゃないかと思う。あと、東京ライターズバンクに入ったのが大きかった。ライター仕事のほとんどはライターズバンク経由でいただいたものばかり。

-独立して生活のリズムは変わりました?

ユキヒロ:フリーランスって自営業という意味では農家や魚屋さんと同じなんだけど、サラリーマンのように月曜から金曜までの9時5時で仕事して土日は休むというリズムもなければ、たとえば漁師さんのように朝早く出港して昼には帰ってくるというリズムもない。仕事はいつくるか分からないし、締め切りが重なることも多いから、要は24時間365日が営業時間になっちゃう。誰かが「自営業は不自由業」って言ってたけどまさにそのとおりで、メリハリのない生活リズムはカミさんにはずいぶん不評でね。それにもともと夜型だったので、ますます朝寝坊のクセが付いてしまった。

-仕事とかに対する考え方も大きく違ったのではないかと思いますが。

ユキヒロ:やっぱり人様からお金を頂戴することの難しさですよね。自分で仕事を探して、営業して相手に認めてもらって、あるレベル以上のクオリティで納品して、それで信用を得て、最後にギャラをいただく、っていう感覚の違いはサラリーマンには理解不可能でしょう。

-この質問がまずければ回答を拒否していただいて結構ですが、収入の面はどうでしたか?

ユキヒロ:独立1年目の売上げを翌年に集計して確定申告するわけだけど、小さな会社に勤めていた間の1月から3月の給与収入と4月以降のフリーランスの収入を合わせた合計額が、独立する前のサラリーマン時代の年俸とほぼ同じになったのね。これはものすごい自信になった。さっきも言ったコンサル契約のギャラがに依るところが大きいんだけど、それでもよく仕事をしたなと(笑)。なんとか生活していけるんだなと。ホント、仕事を回してくれた周囲のバックアップに感謝ですね。

-じゃぁもう、順風満帆だったという感じですね。

ユキヒロ:いや、決してそんなことはなくて、「スーパー源氏」っていう古本サイトを脱サラして運営している河野さんが「自営業 仕事なければ ホームレス」って川柳を教えてくれたんだけど、いつか仕事が来なくなるんじゃないかっていうものすごい不安に毎晩のように襲われていた。今日や明日の仕事はあっても、来週の仕事があるかないかなんてことは、フリーって本当に分からないのよ。失業状態と隣り合わせの恐ろしさは、これもまたサラリーマンには理解できないと思う。収入が途絶えたらどうしよう、いよいよ住宅ローンが払えなくなったらどうしようって、布団に入ったまま明け方までしょっちゅう悶々としていたし、今でもたまにある。だから、外面的な忙しさでは確かに順調に来たけど、人には言えない強い不安をいつも抱えていた。まぁ独立した以上は仕方がないんだと思って受け入れるように努めてはいるけど、なかなか慣れないけどね。

…もしかしたら続く。

注:このテキストは2006年12月頃に書いたものと思われます。