Home > 私がサラリーマンを辞めて独立を決意したわけ(1)

-で、結局のところ、どういう理由で会社を辞めて独立しようと?

ユキヒロ: 2000年2月に知り合いの社長に請われて大手メーカーから小さなところへ転職をしたんだけど、それがトンでもない会社でね。外ヅラはよくてIT業界でもそれなりにプレゼンスがあったんだけど、実際に入社してみたらどうしようもない会社だった。経営なんてもんなじゃくて、おママごとだよ。ちょうどITバブルがはじけた後で、その会社の売上げも利益も一気に下降しちゃったんだけど、業績不振の責任のほとんどが事業責任者に祭り上げられたオレにあるような言い方をずいぶんとされたりした。パワハラに近い形でストレスをかなり受けていたので、電車を待つときは衝動的に飛び込まないように最前列には並ばないようにしてたくらい。よく鬱病にならなかったと思う。ただ給料は結構な額を貰っていたし、すぐに辞めるのも自分としては嫌だったんで、3年間は茨の道を歩きながら我慢した。最後に残留か転職か独立かって悩んで、結局独立を選んだんだ。

-独立を選択したのはどういう理由で?

ユキヒロ:ライターや翻訳の仕事を副業としてずっとやっていたからフリーランスの仕事に憧れていたんだよね。オレってもともと会社に忠誠を尽くすタイプじゃないのよ。上の人間から管理や指示されるのも嫌だし、下の人間に気を遣うのも面倒だしさ。「いつかはフリーランス」って思っていたんだけど、自分で決断しないかぎり「いつか」は永遠に来ないことを悟って、だったら今だなと。そう決めたのが2002年の7月くらいだったかな。当時は転職も天秤に掛けてたから人材コンサル会社に登録したりもしていたけど、独立のみに決めてからは目標ができて精神的に楽になったね。

-奥さんは反対されませんでした?

ユキヒロ: そりゃもう(苦笑)。まだ子どもが小学校に上がる前で、これからお金がかかるようになることもあってか、「絶対に許さないからね」って言われた。

-どうやって説得を?

ユキヒロ:副業でライターや翻訳をやっていたときの経験から、フルタイムで働いたときの収入がなんとなく予想がついたんで、今より多少は減るけどxxx万くらいは稼げる見込みがある、とか何とか説明した気がする。そんなこんなで、いつの間にか許してもらえたらしい(笑)。オレが考えを曲げないことも知ってるしね。だからもしあなたが独立すると仮定して奥さんを説得するときは、夢を語るんじゃなくて、具体的な収入計画を説明したほうがいいように思う。

-独立に向けてどんな準備を?

ユキヒロ:記憶が薄れてあんまり覚えてないけど、いろいろやった。まずノートを買ってきて、会社を辞めたい理由だとか、独立後の仕事に対してどういう理念を掲げようとかを書き出したな。頭では整理がついているように思えても、文字にすると全然違う。これはみんなにお薦めの方法。ノートはなるべく高級なやつね。高級だと丁寧に書くようになるから。あと、本をいくつか読んだ。独立した人の立志伝とか、生き方モノとか、ハウツーモノとか。自分の背中を押してくれた本は今でも古本として処分せずに残してあるよ。

-そのほかには?

ユキヒロ:それまで使っていたMacintoshをやめてWindows機に乗り換えて、翻訳に必要なソフトや辞書を揃えて、事務用にコピー機を買ったりした。12月頃からは営業も始めた。前から付き合いのあった出版社や翻訳会社に独立することを伝えたり、東京ライターズバンクっていうライターのネットワーク組織に加入したりして、会社を辞めた直後から仕事が入ってくるようにした。おかげで仕事ゼロ・収入ゼロの期間はなし。失業保険はうまく処理すれば貰えたのかもしれないけど申請しなかった。

-ご両親は心配されたのでは?

ユキヒロ:自分の両親には心配をかけたくなかったし、細かいことを説明するのがいやなので、言わないことに決めた。息子が大手メーカーで働いていることを誇りにしていた父親には小さい会社への転職も伝えなかった。そのまま死んでしまったけど、そのほうが幸せだったんじゃないかと勝手に思っている。カミさんの両親には辞める直前に言った気がする。大丈夫か、って念を押されたかな。

-関さんのポジションだと会社に勤めていれば年収1,000万円くらいはもらえていたと思うんですが、それでも不安定な独立を選んだのは収入以上の魅力があったということなんでしょうか?

ユキヒロ:よく言われるけど「人生は一回きり」だからね。安定したサラリーよりも生き方を選んだということだと思う。それに、毎日深夜に帰ってきて、家族と一緒に食事も摂れず、しかも土日も仕事して、子どもの成長にもほとんど付き合えないような会社に、なんで勤めなければいけないんだろうって疑い始めたんだよね。このまま心身ともにボロボロになって年齢を重ねていくことを考えたら恐ろしくなった。お金は貰えるに越したことはないけど、それがすべてじゃないでしょ。

独白その2に続く

注:このテキストは2006年12月頃に書いたものと思われます。